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多崎礼「煌夜祭」

こんにちは!

小町です。

 

今回は、久々のファンタジー多崎礼さんの「煌夜祭」です。

綺麗な表紙にワクワクします。

 

 

 

あらすじ

十八諸島の世界を巡り、各地で話を集め、伝え歩く語り部冬至の夜に夜通し物語が行われる煌夜祭だが、島主がいない屋敷で二人だけの語りが始まる。

二人の語り部

二人の語り部が誰もいない島主の屋敷で物語をするところから始まりますが、ここがどんな世界なのか、はじめはまったく何もわかっていません。

語り部に名前はなく、仮面の特徴から頭蓋骨(トーテンコフ)と小夜啼鳥(ナイティンンゲイル)と呼ぶことにします。二人が語るのは、どこかで伝え聞いたおとぎ話のような、実話のような、不思議なお話です。

 

入れ子構造になっており、複雑なところもありますが、物語が進むにつれ徐々にこの世界のことがわかっていきます。

・死の海に蒸気で浮かぶ島々を気球船でつないでいること

・「魔物」と呼ばれる人を喰う不死の存在がいること

・最近大きな戦争があったこと

など。

短篇を読んでいるようで、実はひとつひとつのピースが集約し、紐解かれていくのは先の戦争の真実です。

 

魔物の存在

「魔物」という存在がなぜ生まれてくるのか。

その理由を知りたかった子(ムジカ)がこの世界を大きく展開させていきます。

一人の子どもと魔物の姫との約束が、この物語の大きなカギとなっていくのですが、、、

 

これ以上はネタバレになってしまいそうですね。(笑)

ファンタジーは上手に解説できません💦

特にこの作品は情報を入れずに浸って読んでほしいと思ったので、あまり書かないことにします。

 

ひとつ、ムジカダケというキノコが出てくるのですが、いろんなところに生えるのに毒があって食べられないので、「役立たず」という意味にも使われます。

しかし、実はそのキノコにも立派な役割があったわけで、すべては意味をもって存在するものだと教えてくれます。

 

すべてのことには意味がある

終盤、二人の語り部の正体が明らかになります。

本来語り部の素性は詮索しない決まりですが、明かされることでまたひとつ物語は完結します。

 

語り部の仮面のように、なしえなかった想いは受け継がれ、誰かが繋いでいく。

「すべてのことには意味がある」と思わせてくれる美しい物語です。

「私は思うの。この世に存在するもの、すべてに意味があるのだと。貴方がこの島を焼いたことにも、そこに私が居合わせたことにもきっと意味があるのだと思う」*1

 

途中で胸が締め付けられる展開もあり、たとえ国が滅んでも、たくさんの人が犠牲になっても愛するたった一人を守りたい、という気持ちがとても切なく。。。

 

ファンタジーだから描ける「愛」の表現があるなと、改めて感じました。

子供のころファンタジー好きだった方に読んでほしい作品です。

 

 

 

多崎礼煌夜祭』,中央公論社,2023年11月。

 

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