こんにちは!小町です。
新年度が始まり、希望に胸を膨らませた学生の方々や、新しいスーツに身を包んだ新社会人もしくは就活生の方々をよく街で見かける季節です。まぶしいですね。
私が勤める会社にも、新入社員が入りまして教育担当という役割を仰せつかっておりますが…とってもプレッシャーでございます。
というのも、昨今は〇〇ハラスメントなんかで、「この言い方はまずくないだろうか」と常に考えてコミュニケーションをとる日々。
迎える側もなかなか悩みは尽きません。
そんな新年度に、
まさかの額賀澪「転職の魔王様」を取り上げます。(笑)
近年は大転職時代の到来!?なんて言われていますが、増え続ける転職希望者や労働をめぐる問題について、いま一度自分なりに考える機会としてみます。
あらすじ
新卒で入社した大手広告代理店を3年で退職してしまった未谷千晴。叔母が経営する人材紹介会社シェパード・キャリアで転職活動をスタートするが、担当になったキャリアアドバイザーは「転職の魔王様」という異名を持つ来栖嵐だった。
ドラマにもなっていましたし、エンタメ感もあるので読みやすい内容です。
増え続ける転職希望者
総務省が発表した「労働力調査2023年平均結果」によると、転職者数は328万人で1年前と比べ25万人増加。また転職希望者数としては1007万人と7年連続で増えており、潜在的に転職したいと考えている人もとても多いということが分かります。
先程、希望に満ちた新社会人といいましたが、その一方で4月に入ってから2週間足らずのニュースでは、「退職代行サービス」の話題が取り上げられ、入社して数日の新入社員からの依頼も殺到しているのだとか。理由としては「入社前に聞いていた話と違う」ということが多いそうですが、自分の働く環境に対して違和感を敏感に感じ取っているのかもしれません。
実際、終身雇用制度がほぼ崩壊している現代においては、同じ会社で働き続けることのメリットは少なくなっています。転職することで、早いキャリアアップや給与アップを狙い、待遇を改善しようとするのがスタンダードになりつつあります。
同時に、キャリアアップの前向きな印象付けをするCMなどの宣伝効果によって、転職がネガティブなものだというイメージも払拭されつつあるのではないでしょうか。
そんな転職がある一方、この本の主人公のように、パワハラと激務で心身に影響を受け、会社に行けなくなり、退職・転職を選ぶ人もまだまだ多いのだと思います。
労働をめぐる諸問題
業務内容や過労、人間関係…。働く環境には多くの課題があます。
最近でも、トラック運転手の過労により居眠り運転での事故や、パワハラによる若者の自殺のニュースを目にしました。
この小説はそれらを間接的に取り上げ、また新たな人生の第一歩を助けてくれるキャリアアドバイザーの仕事にも焦点が当てられます。
ストーリーの後半は来栖の過去、過労で事故を起こし自身も亡くなってしまった女性とその被害者、そして遺族や恋人をめぐって展開します。
人は働いてお金を稼いで生きていて、一日の大半は労働に費やしているのですから、どんな職場で誰と、何を仕事とするかは、生き方に直結するといっても過言ではありません。
しかし、仕事で心を病んだり、まして命を落とすようなことはあってはいけないと思います。
「必要とされる場所で働きたいんですか?そうやって、自分の価値を他人の価値観に委ねるから、ブラック企業で扱き使われて壊れたら捨てられるんですよ。自分の価値くらい自分の価値観で測ったらどうです?」*1
主人公の未谷は、大手に就職したら親が喜ぶから、一生懸命動いたら認めてもらえるからと、ずっと他人軸で自分の生き方を評価していました。
キャリアアドバイザーの来栖は冷たくて厳しい人ですが、彼の言葉には誰よりも自分と向き合うことを促してくれます。
この本の中で印象に残ったのは「自分が尊敬できる人の元で働きたい」という希望を口にした若い男性です。
最初は漠然と、ここから離れたいという気持ちしか出てきませんでしたが、今の環境の何に対して不満を感じているのか、自分が大切にしたい生き方は何かがだんだんと見えてきます。
疲れたら一度、立ち止まって考えてみるといいかもしれません。
あとですね、この小説の中でやたらと食事をするシーンが多いなと思ったのですが、主人公が味覚障害になっていることを明かされるまで全く気が付きませんでした💦
確かに、触感や見た目のことしか描写されていないんです。
細かなことに気づく力も大事ですね。
社会の仕組みだけでなくて、人の無関心も環境を悪くする一つの要因ですから、気づける人でいたいと思いました。(反省)
自分の価値観で
特に労働環境が悪いとは言えなくても、給与や働き方で将来の不安などを漠然と抱え、このまま働き続けていいのだろうかと、転職サイトに登録してみたり…なんて経験のある人も多いはずです。
いろんな選択肢があるからこそ、悩むことが多い現代日本です。
失敗したくない、自分に合うものを教えてほしい、時間を無駄にしたくない。
飲食店のレビューサイトのように、会社にもレビューサイトがあり、
誰かのおすすめや、あと押しがないと何も決められない世の中になってしまいました。
生きやすくなる第一歩は自分の価値観を磨くことではないかと私は思います。
たまにはレビューサイトを見ずに、直感でお店を選ぶことからしてみるのはどうでしょうか。
額賀澪『転職の魔王様』,PHP研究所,2021年2月.
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