こんにちは!
小町です。
労働環境のせいでなかなかできない更新。やっと第3回目という感じです。
原田ひ香さんの「三千円の使いかた」を読んでの感想を書いていきますが、
タイトルの時点で、自分ならどうかな?と考えが膨らみそうです。
あらすじ
美帆、真帆、智子、琴子……御厨家の女性たちは、どのように人生と向きあい、どのようにお金を使うのか?節約と家族をテーマにした小説です。
最近は物価高、値上げラッシュで節約が世の中のトレンド。私自身も資産形成しなきゃなと思うこの頃です。
そんな中で手に取ったこの本。今出会えてよかったと思う内容でした。
お金の使いかた=人生!?
資本社会では、生きることと消費を切り離して考えることはできません。
何を買い、我慢し、何に備えるのか……お金の使いかたはそれこそ生き方を決める行為と言っても過言ではないと思います。
もしくは、買ったもので自分が形成されるという考えもできるかもしれないですね。
なるほど、確かに、お金の使い方は人を表すのかもしれない。
美帆は手に持っていたガラスのティーポットを棚に戻した。そのものが自分だ、と考え出すと、なんだか本当にそれがふさわしいのかわからなくなった。*1
昔、祖母に言われた言葉を思い出し、美帆は自身を振り返ります。
子供のころ、お小遣いでもらった数百円、お年玉の三千円を何に使っていましたか?
大人になった今でさえ。今季のボーナスは何に使おうか、臨時で入ったお祝い金で何をしようか。そして毎日のお金の使い方。序盤から自分はどうだろうと考えさせられました。
美帆の場合
同じ環境で育ちながらも、若く独身で浪費家な美帆と家庭があり堅実な真帆の姉妹は、とても面白い対比です。
彼氏と別れ、保護犬を飼うために家を買う!という夢ができた美帆は姉に習いながら節約を頑張りはじめます。
1000万円貯めるにはどうしたらいいのか?
美帆の目線で、節約やお金の知識を学べるのもこの本の面白い構造だと思います。
節約・貯金って、しなくていいならしたくないですし、最中は周りが羨ましいと思うこともありますよ。最近の節約こそ正義!みたいな風潮も嫌ですしね。しかしこの本からはそんな押し付けは感じられない。
実用書的な面もありますが、小説ならではの伝わり方を実感しました。
智子の場合
意外にも印象に残ったのは、母智子です。
募る夫への不満から熟年離婚を意識し始めますが、そこで問題になるのはやっぱりお金。
今まで頑張ってきたのに、専業主婦が離婚するとこんなにも世知辛いものかと。
お金の話題ってマイナスのイメージが強くタブーな感じもしますが、しかし一度その過程を経て、夫と、家族と改めて向き合う姿には新しい一歩を踏み出す前向きなメッセージがありました。
男性の意識の欠落
先ほどの智子の話の時もそうなのですが、全体として男性が家計を考えるという描写が無いなと気づきました。
美帆の会社の元先輩、街絵さんのエピソードも強く印象に残っていて、社会という場から離れることを考えにくい男性と、出産子育て介護での離脱を常に念頭において生きる女性との違いかもしれません。その不安定さがあるからこそより女性の方が、どう生きていくか=どうお金と付き合うかを考えるのだと感じます。
美帆の元彼、琴子の再就職に対して息子の反応を見るに、古い価値観がまだまだ根強いですが、ゆえに女性の逞しさも社会には不可欠だなと改めて思います。
安生という男性も、そんな女性に影響を受けていきます。
そして、美帆と出会う大学生の翔平に新たな時代のアップデートを予感します。
「全部、一歩ずつですよ。焦らないで。すべてを一気に変えようと思わないで」*2
人生に不安があるなら、是非読んでほしい。
生き方を変えたいと思ったとき、いつだってお金の使い方を見直すことから始まるのです。
原田ひ香『三千円の使いかた』,中央公論新社,2018年。(文庫版『三千円の使いかた』,中央公論新社,2021年。ここでは文庫版を使用)